伝兵衛が鍵となる!? 劇団アレン座が名作『熱海殺人事件』を改新上演!


 

個性と才幹に優れた俳優が所属する劇団アレン座(Allen suwaru)
つかこうへい没後11年にあたる2021年、彼らの手により傑作戯曲『熱海殺人事件-ザ・ロンゲスト・スプリング-』が上演される。

 

物語の中核を担う木村伝兵衛部長刑事栗田学武、古きよき荒さと渋さを併せ持つ熊田留吉刑事レノ聡、木村部長の愛人である芳しき紅一点・水野朋子女性警官桜彩が演じる。

 

この3人に介入することとなるのは、殺人を犯したとされる容疑者・大山金太郎
善か悪か、哀しき事由を秘めるこの役に磯野大が挑む。

今なお愛され続ける不朽の名作を、演出・脚本鈴木茉美は常識にとらわれず、現代性を柔軟に組み込み、新たな角度から生まれ変わらせる。

 

本記事では、稽古真っただ中のキャストの4名と、演出・脚本の鈴木との対談が叶った。

演劇界にとって激動の2020年を乗り越えた、今この瞬間だからこそ湧き出る想いの数々をぜひ最後まで読みすすめて感じてほしい。

 

栗田「木村伝兵衛のカギは、僕の中に眠る“〇〇性”」

 

――数ある『熱海殺人事件』シリーズから「ザ・ロンゲスト・スプリング」を選んだのはなぜでしょうか?

 

 

鈴木茉美(以下、鈴木):アレン座の俳優のキャラクターと合致したということが大きいです。
実は3年前にもアレン座で『熱海殺人事件』を上演したのですが、今回は“2021年だからこそできる演出”にもこだわり、新しい配役でこの作品を一からスタートしています。

 

――配役決定の経緯は?

 

鈴木:配役について、レノ聡さんは前回のアレン座の『熱海殺人事件』にも出てもらっていて、今回もぜひお願いしたいなと。

女性警官の水野は内面の熱量を外へ爆発させる人物。そんな彼女を、桜が演じる姿を見てみたいなと思いました。

磯野は「本人をさらけ出す」ということは、ここ2〜3年のキャリアの中で習得してきたとは思うのですが、今後は「何かになる」という部分が課題となるのではと考えて。
磯野の人間像とかけ離れた大山金太郎という役に入り込むことができれば、「役になる楽しさ」を体感できるのではないかと考えます。

同じく栗田学武も、何かを引率して突き進んでいく役柄というのは今まであまり経験してこなかったので、木村伝兵衛部を演じることで役者としての新しい面を切り開くと同時に、“自分を開放する”ことを学んでもらえたらなと思います。

 

 

 

栗田学武(以下、栗田):僕は劇団アレン座の立ち上げからほぼ全ての主催作品に出演してきたのですが、3年前の『熱海殺人事件』だけは唯一、スケジュールの関係で出ることができなかった作品なんです。

だからこそ僕にとって本作には“未練”がありました。

出演が決定した際、その未練をついに晴らすことができるということと、「俺は本当に木村を演じられるのか?」という思いの間で板挟みでした。

僕はどちらかというと受け身で、周りの状況を取りまとめることが多いんですが、木村は自分から“場を動かす人”なんですよね。
いろいろと葛藤があった中、茉美さんに「どうやったら僕は木村に近づけますかね?」と聞いたら、「あなたの“変態性”を出したらいいんだよ」って。
そこではじめて「ああ、俺って変態なんや」と気づいたんです(笑)。

だから今、稽古の中でその変態性と向き合って、木村像を固めようとしている最中です。

 

 

 

桜彩(以下、桜):それを聞いて私も、“木村とずっと一緒にいる水野も変態だろうな、だったらもっとバカにならなきゃな”って思ったんです(笑)。

私は感情を表に出さず殻に閉じこもるタイプなので、水野とは性格が真逆。
台本をもらって稽古がはじまってから疲労感がすごくって。
舞台上で木村をずっと目で追って、彼の一挙一動についていかなければいけないので。

「これ一回通すだけでもこれだけ消耗するのに、一日に二回も本番やるの?」って気づいたとき、なら私は毎公演、どこまで自分を開放して“バカ”になれるんだろうってことに行き着きました。今から本番がすごく楽しみです。

…二人三脚なんですよね、木村と水野って(笑)。

 

栗田:もし、舞台上で水野が開放しきれていなかったら、僕の変態性が足りなかったせいかも知れないですね(笑)。

 

一同:(笑)

 

――水野のような女性が実際に身近にいたらいかがですか?

 

:もし現実にいたら、怖いけど憧れちゃうんじゃないかな…、自分の欲望に忠実だし、開放的だし、身の回りにこんな女性はなかなかいないですし。
あそこまで野性的だと圧が勝っちゃいそうだけど、だからこそ異色でカッコいいなと感じます。

 

 

俳優業は大なり小なりメンヘラ…?

 

――『熱海殺人事件』といえば、セリフ量の多さで有名ですが…。

 

 

 

磯野大(以下、磯野):そうなんです。
一番最初に台本をいただいたときの感想は「セリフ、長いな!」でした(笑)。とんでもない文字量で。

役においては、容疑者なのに中盤まで一番マトモなんです。大山って。
他の3人(木村・水野・熊田)を仕切っていかなきゃいかない場面も出てきて。
そういう役を僕は今までやってこなかったんですよね。

例えば、栗田さんは普段は“ツッコミ”担当、もう一人の団員である來河さんと僕は“ボケ”担当
いつも僕が思ったことを素直に好き勝手やっているのを全面的に面倒見てもらっている感じです。
舞台上でも同じで、僕が即興でアドリブを入れたら、栗田さんがそれをうまく拾ってくれるんです。

ただ今回はお互いに担当が入れ替わっちゃったから、2人とも内心バタバタで(笑)。

ついボケたくなるのをぐっとこらえて、僕がみんなを取りまとめて、その中であの文字量を処理して順序よくすすめて、もちろんお客さんに向けて発信をしなきゃいけない…、そしてさっき茉美さんが言っていたように「大山になりきる」という課題もあって、とにかくずっと“考えていなきゃいけない役”ですね。

 

――レノさんは2回目のご出演ということですが。

 

 

 

レノ聡(以下、レノ):こういった有名作品って、僕たちみたいな発展途上の若手俳優にとって、やらせていただける機会はホントに少ないんです。圧倒的なスキルが必要になってくるので。
3年越しにまた携わることができる光栄さと喜びと、個人的に前回やり残したことを昇華したいという思いで臨みました。

茉美さんにいただいた配役が僕にぴったりだと思って。
俳優って職業は大なり小なりみんなメンヘラだと僕は勝手に思っているんですけど、普通はその部分は他人に見せたくないはずなんですよね。

でも僕は抑えきれなくなってよく泣きごとを口にしてしまう(笑)。そして熊田は自分の人生を、他人に隠さずありのままに言う。
そういう「さらけ出す」、という部分では僕と熊田はすごく近しいと思います。

熊田という役は、物語の開演とともに木村の次に登場する人物で、非常に重要な“着火剤”となる立ち位置
締める時は締める、弾けるところは弾ける、メリハリがあって男前だからこそまっすぐな性分を、どれだけ伝えられるかにかかってくるかと思います。

でもまぁ、この作品、結局は木村部長次第なんですけどね(笑)。

 

栗田:またそういうことを言う(笑)。
ありがたいけど、すごいプレッシャー!

 

――今回、「アレン座だからこそ」というポイントはありますか?

 

 

鈴木:近年、つかさんの作品が古典的なものに移り変わってきていて、この分野にはじめて触れる若い世代にとっては昭和の熱さに敬遠してしまうこともあるかも知れません。
でも胸に秘めた熱量だったり、感情だったりは今の時代の人たちも絶対持っているはずなんです。
本作はそんな方たちに向けて、必要な部分は原作のまま残して、よりわかりやすく届きやすく、令和という新たな時代を受け止めた上で演出を改新しています。

もし、これが大きな劇場でやるとなるとできるだけ古典的な部分を残したいと思うんですが、今回は小規模での上演。しかもキャストも個性的。
この規模と個性を生かして、わざとつかさんの作品を崩していきたいと考えます。
キャストはもちろんですが、私は劇場と演目の関係性もすごく大切にしていて

今回のアレン座が主催する『熱海殺人事件』も“この空間・この瞬間・このキャスト”にしかできない作品に仕上がっていると思います。

 

 

ファンへ贈るメッセージ

 

――改めて、これから観劇するファンの皆さんへメッセージをお願いします。

 

 

栗田:今回の課題は僕の変態性を出し切るということに尽きるのですが。
役中に出てきた変態的な部分は、一切言い訳するつもりもなく“僕の根本”そのものです。
「俺はどう思われても良い、全てさらけ出すぞ」という覚悟のもと、2021年新年一発目から大舞台へ挑みたいと思います。

『熱海殺人事件』は一見、とっつきにくそうだなと感じるかも知れません。
でも一切そう感じさせない、共感性の高い演出を茉美さんに用意してもらっています。
そして、つかさんが昭和の時代に生み出した人間の普遍的なところも、そもままギュッとつまった作品になっていると思います。
ぜひ2021年の一番はじめに、本作をご覧いただけると非常に嬉しく思います。
よろしくお願いいたします。

 

レノ:ご覧になったらきっと「演劇カッケーな!」と感じる作品だと思います。作品自体が持つ熱量と、演出の熱量と、俳優の熱量に。

素晴らしい作品は何十年経っても、台本そのものに面白さがあると感じますし、きっと変わらず人を魅了してくれます。

昨今、演劇に触れる機会も少なくなっているかと思います。

この作品を生で見たらきっと「人間がんばろう!」っていう昭和のパワフルなエネルギーをもらって帰ることができるはず。
ぜひエナジーチャージをしに来てください!

 

磯野: 舞台をやらせていただいて約2年が経ち、いろんな経験を通して免疫ができました。しかし、役を無理やり“通そう”とすると方向性を誤ってしまうし、“表現”って自分の中にもともとあるものからしか生まれないので、それを「最大限に引き出す」というのが今回の僕の課題です。

田舎のヤンキー・大山金太郎のリアルな人間性と熱さを、劇場を通して皆様にお届けできればなと思います。

そして、この4人の信頼関係、素敵なスタッフさん、演出と脚本をつけてくれた鈴木茉美さん、いろんな人の想いが組み合わさって作られた舞台なので、そこをお客様皆さんにじかに感じ取っていただけたらと思います。
よろしくお願いいたします。

 

:自分自身の開放を通して、“水野の欲”を表現できればなと思います。
アレン座の舞台を観に来てくださる9割の方が女性なので、「あ!こういう女いる!」または「え、こういう女の人って実在するの?」と、反応が二手に分かれると思うんです。

女性ならではの共感だったり、笑えてしまう部分だったり、いろんな魅力が水野にはあると思うので、ぜひ実際に確かめに来てくださると嬉しいです。

 

鈴木:この劇場で、このメンバーと、このスタッフ、この時世、全てが揃って今しかできない舞台になっています。
キャストたちの全力な姿を、ぜひ観に来ていただけたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

 

***

 

篤い信頼関係で結ばれた座組の中で、一同が悩みながらもこの名作に打ち込む姿に、いまだかつてない真新しい『熱海殺人事件』を目の当たりにできるのではないかと、今から期待が止まらない。

劇団アレン座主催公演舞台『熱海殺人事件-ザ・ロンゲスト・スプリング-』は、2021年1月6日(水)~11日(月・祝)花まる学習会王子小劇場にて上演。

そのほか、会場ではオリジナルグッズと併せて、目を引いたのが稽古場ランダムチェキの物販。
あらゆるところにスタッフの愛と趣向が凝らされている。

本作に関わる人達の全力の想いを、会場に赴く際にはぜひチェックしてみてほしい。

 

 

※本公演の内容・スケジュールは、情勢を鑑み変更する場合があります。予めご了承ください。

 

取材・文・撮影/ナスエリカ

 

アザーカット>>>

 

 

 

 

 

■公演情報

 

■タイトル
舞台『熱海殺人事件 -ザ・ロンゲスト・スプリング-

【会場】
花まる学習会王子小劇場

【日程】
2021年1月6日(水)~11日(月・祝)
<全10公演>

【タイムスケジュール】
1/6(水) 19時
1/7(木) 14時/19時
1/8(金) 14時/19時
1/9(土) 13時/18時
1/10(日) 13時/18時
1/11(月) 13時

【作】つかこうへい

【演出】鈴木茉美

【出演】
栗田学武(劇団アレン座)
磯野大(劇団アレン座)
桜彩(劇団アレン座)
レノ聡(天才劇団バカバッカ)

【詳細】<全席自由席>
■特典付き前方エリア:6500円(税込) ※非売品グッズ付き
■一般席エリア:5000円(税込)
■学割エリア:800円(税込)※高校生以下対象
一般指定席:7,600円(税込)

・URL :http://allen-co.com/allen-atamisatujinjiken/

・Allen suwaru公式Twitter: @Allen_suwaru
・Allen suwaru公式ブログ: https://ameblo.jp/allen-suwaru
・公演についてのお問い合わせ: info@allen-co.com

主催・制作:株式会社Allen

劇団アレン座が挑む、ONLINE演劇×つかこうへいの名作。
不朽の名作、不屈の劇団。
突如おとずれた演劇の冬に、つかこうへいが残した種から新しい色の花を咲かせる。
新しい時代、新しい生活様式、そして、新しい演劇。
俳優の肉体は、魂は、ソーシャルディスタンスを越えて観客の肉体に、魂に、届くのか。
気鋭の演出家・鈴木茉美の現在を貫く鋭い感性で『熱海殺人事件』が生まれ変わる。